食欲がないときはどうする?原因・食べやすいもの・受診の目安

お腹が空かない。何か食べたほうがいいとは思うけれど、食事を前にすると気持ち悪くなる。

そんなとき、「何なら食べられるのか」「このまま様子を見てもいいのか」と迷うことがあります。

食欲がないときは、まず水分を取れるか、飲み込みに問題がないか、急いで受診すべき症状がないかを確認しましょう。食べる量を増やす工夫は、その次です。

この記事では、大人の食欲不振について、考えられる原因、食べられる状態に合わせた対処法、受診の目安を整理します。

※一般的な情報をまとめた記事であり、原因の診断をするものではありません。治療中の病気がある方や、食事・水分の制限を受けている方は、主治医の指示を優先してください。


食欲がないとき、まず確認したい受診のサイン

「食欲がないだけ」と思っていても、一緒に現れている症状によっては、食事の工夫より受診を優先する必要があります。

意識の変化や激しい痛みがあるときは119番

次のような症状があるときは、ためらわず119番に連絡してください。

  • 呼びかけへの反応がおかしい、意識がない
  • 急な息苦しさ、強い胸の痛みがある
  • 突然の激しい腹痛、または激しい腹痛が続く
  • 大量に血を吐く、大量の下血がある、真っ黒い便が出る

消防庁も、こうした症状を救急車を呼ぶ目安として案内しています。意識がはっきりしない人に、無理に食べ物や飲み物を口に入れないでください。

出典:総務省消防庁「救急車利用マニュアル」

水分が取れない・尿が少ないときは当日中に相談する

水分を飲んでも繰り返し吐く、尿が普段より明らかに少ない、立ちくらみが続く場合は、脱水などが心配です。当日中に医療機関へ相談し、ぐったりして反応が鈍い場合は119番に連絡してください。乳幼児や高齢の方は脱水が進みやすいため、この記事の目安にかかわらず、早めに相談しましょう。

受診を急ぐか迷うときは、実施地域では**救急安心センター「#7119」**を利用できます。対応地域・受付時間は自治体などで確認してください。明らかに緊急の症状がある場合は、相談電話を挟まず119番へ。

出典:NHS「Dehydration」、政府広報オンライン「もしものときの救急車の利用法」

食欲不振が続く・体重が減るときは内科へ

食事量が減った状態が何日も続く、体重が意図せず減っている、日常生活に支障がある場合は、内科や消化器内科に相談しましょう。飲み込みにくさ、発熱、皮膚や白目が黄色くなる変化なども伝えてください。

**「何日続いたら受診」という決まった基準はありません。**ほとんど食べられない、症状が悪化しているという場合は、期間が短くても相談が必要です。

出典:済生会「食欲不振」

食欲がなくなる主な原因

食欲不振の原因は一つとは限りません。「いつから」「ほかにどんな症状があるか」を整理すると、診察でも状況を伝えやすくなります。

一時的な疲れや生活の変化

疲労や精神的な負担をきっかけに、食欲が落ちることがあります。忙しい日が続いていなかったか、休息を取れていたかを振り返ってみましょう。

水分が取れ、ほかに強い症状がなく、少し食べられる場合は、休息を取りながら食べられるものを少量ずつ試します。ただし、長引く不調を疲れだけで片づけないことが大切です。

胃腸の不調

胃炎や胃腸炎、便秘などによって、食欲が落ちることがあります。胸やけ、吐き気、お腹の張りなどがあると、食事が進みにくくなることもあります。

また、検査で症状を説明する明らかな異常が見つからなくても、胃もたれや「少し食べただけで満腹になる」症状が続く病気に、機能性ディスペプシアがあります。

「胃カメラで異常がなかったから我慢するしかない」と考えず、困っている症状を消化器内科で相談してください。

出典:日本消化器病学会「機能性ディスペプシア(FD)ガイド2023」

全身の病気や薬の影響

食欲は胃腸以外の状態にも左右されます。感染症や、肝臓・腎臓・心臓・甲状腺などの病気が関係することもあります。ただし、食欲がないという症状だけで病名は判断できません。

出典:済生会「食欲不振」

薬の影響も確認したい点です。薬を飲み始めた時期や量を変えた時期と、食欲が落ちた時期をメモしておくと役立ちます。以前から飲んでいる薬でも、体の状態によって影響が変わる場合があります。

薬は自分で中止・減量せず、処方医や薬剤師へ相談してください。市販薬やサプリメントも含めて伝えましょう。

出典:国立長寿医療研究センター「食欲低下 薬を見直してみよう」

ストレスや心の不調

食欲の低下は、心の不調に伴って現れることもあります。眠れない、気分が落ち込む、以前楽しめていたことを楽しめない、といった変化があれば、食事のことと一緒に相談してください。

心療内科・精神科も相談先になります。どこに行くか迷う場合は、かかりつけ医に話してかまいません。

ストレスに心当たりがあっても、それだけが原因とは限りません。体の症状も含めて確認してもらいましょう。

出典:厚生労働省「心身の不調への対応」

液体しか飲めないと何が起きる?

液体しか口にできない場合は、飲めた量・栄養の内容・飲み込み方を確認します。「液体だから危険」「飲めているから安心」と、一律には判断できません。

水分不足・脱水のサイン

口の乾き、濃い色の尿、尿の回数の減少、立ちくらみなどは、脱水のサインになることがあります。嘔吐や下痢があると、飲んだ分以上に水分を失っている場合もあります。

尿については「6時間出ていなければ脱水」と決めつけず、普段との違いや全身の状態も確認します。飲める場合は一度に大量に流し込まず、少しずつ。飲めない、吐いてしまう、症状が強い場合は受診を優先してください。

出典:NHS「Dehydration」

栄養不足・低栄養のサイン

水や無糖のお茶では、体に必要なエネルギーやたんぱく質を十分に補えません。栄養が足りない状態が続くと、体重や筋肉が減り、体力の低下につながることがあります。

飲み物でも栄養を取ることはできますが、牛乳を少し飲めたことと、1日に必要な栄養が足りたことは別です。体重が減り続ける、疲れやすさが強くなる場合は、食事内容を含めて相談しましょう。

出典:国立長寿医療研究センター「栄養の基礎知識」

むせる・飲み込みにくい場合は別の対応が必要

飲むと咳き込む、食後に喉に残る感じがする場合は、食欲とは別に、飲み込みの問題があるかもしれません。

飲食物が気管へ入ることを**誤嚥(ごえん)**といいます。水のようにさらさらした液体や、汁と具が混ざった食べ物が、かえって飲み込みにくい人もいます。

「液体にすれば大丈夫」「とろみをつければ安全」と自分だけで判断せず、医療機関へ相談してください。食べ物の形やとろみの程度は、飲み込みの状態に合わせる必要があります。

出典:国立長寿医療研究センター「摂食嚥下障害」、同「食事中にむせませんか?」


食べられる状態別|食欲がないときの対処法

ここでは食事を選ぶための目安として、4つの状態に分けます。**医学的な重症度の分類ではありません。**むせ・詰まり感がある場合は、以下の食品例を試すより先に相談してください。

① 少しなら食べられる

1回の量を減らし、食べられそうな時間に分けて取りましょう。例えば、食事と間食を合わせて1日5〜6回に分ける方法があります。回数そのものを目標にする必要はありません。

おかゆやうどんだけで終わりがちなときは、受け付けそうなら卵や豆腐を少し添える、という考え方です。最初から普通の一人前を用意せず、小鉢や小さな器を使ってもよいでしょう。

② やわらかいものなら食べられる

茶碗蒸し、豆腐、ヨーグルト、プリンなどが候補です。「温かい食事はにおいがつらいけれど、冷たいものは食べられる」という場合もあるため、温度も変えてみます。

購入するなら、小容量のパックや、開封後に食べ切りやすいものが便利です。ただし、やわらかい食品でも、飲み込みに問題がある人に必ず適するわけではありません。

①②の参考:国立がん研究センター「食欲がない・食欲不振」

③ 飲み物・半流動食が中心

むせずに飲める場合は、水分補給に加えて、栄養を含む飲み物も検討します。

選択肢選ぶときのポイント
牛乳・豆乳エネルギーやたんぱく質を補う選択肢。体質やアレルギーに合わせる
飲むヨーグルト飲みやすさと栄養成分を確認。乳製品でお腹を下す人は無理をしない
ポタージュなど材料によって栄養量が違う。スープだけで十分とは考えない
栄養補助飲料・ゼリー1本当たりのエネルギーとたんぱく質を確認。商品によって補える内容が異なる

「ゼリーならどれも同じ」ではありません。エネルギー補給が中心のものと、たんぱく質なども含むものがあります。選びにくい場合は薬剤師や管理栄養士に相談してください。

飲み物だけの状態が続く、必要な量を取れない場合は、栄養補助食品だけで乗り切ろうとせず受診しましょう。

参考:国立病院機構 神戸医療センター「Q&A」食欲不振・食事に関する項目

④ 水分もつらい・飲むたびにむせる

水分を受け付けない、繰り返し吐く、飲むたびにむせる場合は、受診を優先する状態です。飲み切ることを目標にせず、医療機関へ連絡してください。

意識や呼吸の異常、強い痛みがある場合は119番へ。本人の反応が鈍いときに、周囲の人が無理に飲ませるのも避けましょう。

出典:総務省消防庁「救急車利用マニュアル」、国立長寿医療研究センター「摂食嚥下障害」


食欲がないとき、食べる負担を減らす工夫

食欲を戻す方法は原因によって違います。ここでは、食べられる範囲で負担を減らす工夫を紹介します。

量より「食べられる形」を探す

「ご飯を一膳食べる」ではなく、「小さな茶碗蒸しならどうか」「ヨーグルトを数口ならどうか」と考えてみます。

調理する元気がない日は、市販品を使ってかまいません。手の込んだ献立を作ることより、今の状態で食べられるものを用意することを優先します。

一口で取れる栄養を増やす

量を増やしにくいときは、食べられる料理に食材を少し足す方法があります。

食べられそうなもの足す食材の例補いやすくなるもの
おかゆ十分に加熱した卵、豆腐たんぱく質・エネルギー
ポタージュ牛乳、豆乳、チーズたんぱく質・エネルギー
スープ少量のオリーブオイル主にエネルギー

油はエネルギーを補えますが、たんぱく質はほぼ補えません。「何を足すと何が増えるか」を分けて考えると、選びやすくなります。

これは組み合わせの例です。胃もたれや下痢があるときに油や乳製品を無理に増やさず、食事制限がある場合は主治医・管理栄養士に確認してください。

参考:国立長寿医療研究センター「良質なたんぱく質とは?(2)」、国立がん研究センター「がんと食事」

香り・酸味・温度を調整する

湯気や料理のにおいで気持ち悪くなる場合は、食べる前に少し冷ます、換気するなどの方法があります。だしや少量の酸味で食べやすく感じる人もいます。

ただし、口の中が痛いときは、酸味や香辛料が刺激になることがあります。食べて不快感が増す味付けは避け、「体によさそうだから」と我慢して食べる必要はありません。

参考:国立がん研究センター「味覚やにおいの変化」、同「がんと食事」

食べた量と体調を簡単に記録する

受診時に説明しやすいよう、スマホに次の項目を残しておきましょう。

  • いつから食欲が落ちたか
  • 食べたもの・おおよその量
  • 飲んだもの・おおよその量
  • 体重の変化、尿の回数や色
  • 吐き気、腹痛、むせ、発熱など
  • 飲んでいる薬と、開始・変更の時期

例えば「朝はヨーグルト半分、昼はうどん数口。飲み物は200mLのコップで3杯。立つとふらつく」といった書き方です。これは記録の例で、必要量を示したものではありません。

正確なカロリー計算より、診察で困っている状態が伝わることを目指します。記録をそろえるために受診を遅らせる必要はありません。

食欲不振について、よくある質問

水やお茶だけ飲んでいれば大丈夫?

水分補給にはなりますが、食事に必要なエネルギーやたんぱく質は十分に補えません。水分が取れることと、栄養が足りていることは別です。

食べられない状態が続く、体重が減る場合は、飲めていても相談してください。

スポーツドリンクや経口補水液だけでいい?

どちらも、食事の代わりに必要な栄養をすべて補うものではありません。

経口補水液は、感染性胃腸炎による下痢・嘔吐などに伴う脱水時に、水分や電解質を補うための病者用食品です。使用できる場面は製品の表示を確認し、医師・薬剤師などに相談してください。

一般的なスポーツドリンクよりナトリウムやカリウムが多く、糖質も含みます。普段の水分補給として常用せず、塩分・カリウム・糖質・水分などに制限がある方は特に確認が必要です。

出典:消費者庁「経口補水液について」

無理にでも食べたほうがいい?

吐き気が強いときに、大量に食べようとする必要はありません。飲み込みに問題がなければ、受け付けるものを少量ずつ試します。

ただし、「無理に食べなくていい」と「食べられない状態を放置していい」は別です。ほとんど食べられない状態が続くときは、原因の確認と栄養面の支援を受けましょう。

参考:国立がん研究センター「吐き気・嘔吐」

何科に行けばいい?

迷う場合は、まず内科やかかりつけ医へ。胃痛、胸やけ、吐き気などが中心なら消化器内科も相談先になります。

飲み込みにくさがある場合は、予約や診察の際に必ず伝えてください。状態に応じて耳鼻咽喉科などの診療につながることがあります。気分の落ち込みや不眠も強い場合は、心療内科・精神科でも相談できます。

出典:済生会「食欲不振」、国立長寿医療研究センター「摂食嚥下障害」

情報確認日:2026年10月3日

参考資料のうち、国立がん研究センターと神戸医療センターの資料は、主にがん治療・療養中の方を対象としています。本

記事では食べ方の工夫を参考にしており、食欲不振からがんを推測するものではありません。

本記事は一般的な情報をまとめたもので、医療監修を受けた原稿ではありません。

診断や治療に代わるものではないため、症状が気になる場合は医療機関へご相談ください。