「商品の説明は頑張ったのに、『ちょっと検討しますね』と言われて帰られてしまった」
「お客様に何を聞けばいいのか、わからない」
そんな経験はありませんか?
前回の記事では、提案が苦手な人ほど商品説明に走ってしまう理由をお話ししました。
今回はその続きです。お客様の話を聞いて、希望に合った提案につなげる「ヒアリング」のやり方を、携帯ショップの接客例を使って紹介します。
大切なのは、質問をたくさんすることではありません。お客様が何に困っているのかを知ってから、理由のある提案をすることです。
この記事でわかること
- 商品説明の前に聞いておきたい質問
- お客様のタイプ別の話しかけ方
- 「不便です」と言われたときの、質問のその先
- 「検討します」と言われたときの返し方
- 携帯ショップの具体的な接客例
商品説明だけの接客は、教科書の読み上げに似ている
学校の授業を思い出してみてください。先生が教科書をずっと読み上げているだけだと、ちょっと眠くなりますよね。
商品説明だけの接客も、これと少し似ています。商品のことは伝わっているのに、「自分に関係ある話なのかな?」とお客様が感じにくいのです。
もう一つ、洋服屋さんで考えてみましょう。
店員さんがいきなり「このコートは素材が良くて、デザインも人気です」と話し始めるのと、「どんなときに着る予定ですか?」と聞いてくれるのとでは、後者のほうが「自分のために選んでくれている」と感じますよね。
携帯ショップも同じです。説明を始める前に、まず「どんなふうに使いたいか」を聞いてみましょう。ここでの質問は、**お客様の使い方を知るための「問診」**のようなものです。
病院でも、お医者さんは薬を出す前に「どこが痛いですか?」「いつからですか?」と聞きますよね。話を聞かずに薬を出すお医者さんは、ちょっと不安です。
まず一つだけ、この質問から
何から聞けばいいかわからないときは、この一言から始めてみましょう。
「どのような場面で使うことが多いですか?」
答えは人それぞれです。
- 「仕事の連絡と、電車で動画を見るくらい」
- 「子どもの写真をたくさん撮りたい」
- 「とにかく月々の料金を安くしたい」
この答えがわかると、次に何を説明すればいいかが見えてきます。
お客様のタイプで、話しかけ方を変えてみる
学校でも、友だちによって話し方を少し変えていませんか? おとなしい子にはゆっくり、元気な子にはテンポよく、というように。接客も同じで、お客様の様子に合わせると話しやすくなります。
急いでいる方
時間があまりない方には、質問をしすぎると「早くしてほしいのに…」と感じさせてしまうかもしれません。
- 「お急ぎでしたら、ポイントだけ先にご案内しますね」
- 「確認したいことは一つだけです。今回は何を一番変えたいですか?」
比べながら見ている方
じっくり見ている方には、いきなり話しかけず、少し見てもらう時間をつくります。
- 「ご覧になっている間に、気になることがあればお声がけください」
- 「違いをご案内することもできますので、お気軽にどうぞ」
ご家族で来店された方
ご家族の場合は、使う人によって、ほしいものが違うことがよくあります。
- 「お使いになるのは、どなたですか?」
- 「それぞれ、使い方に違いはありますか?」
おじいちゃんは通話中心、中学生の子どもは動画やゲーム中心、というように、一人ひとり聞いてみると、必要なものが見えてきます。
すでに詳しい方
自分で調べてきた方には、説明しすぎないことが大切です。
- 「どの点が気になって、お調べになりましたか?」
- 「ここまでで、迷っている点はどこですか?」
詳しい方に基本から説明すると、「もう知っているのに…」と思われてしまうかもしれません。どこで迷っているのかを聞いて、そこから話を進めましょう。
「不便です」と言われたら、そこで終わらせない
質問のあと、お客様が「今のスマホ、ちょっと不便で」と答えてくれることがあります。ここがチャンスです。
でも、「不便」とだけ言われても、何が困っているのかはまだわかりません。お医者さんで「具合が悪いです」とだけ言われても、治せないのと同じです。
そこで、もう一歩だけ掘り下げてみましょう。
例1:「バッテリーがもたなくて」と言われたら
- 「夕方くらいになくなってしまいますか?」
- 「外出が長い日が多いですか?」
- 「充電器を持ち歩いていますか?」
お客様のお話が「毎日外回りで、充電する時間がない」だとわかれば、バッテリーが大きい機種を中心にご案内できます。
例2:「料金が高くて」と言われたら
- 「毎月、どのくらいかかっていますか?」
- 「その中で、高いなと感じるのはどの部分ですか?」
- 「データはどのくらい使っていますか?」
「実は、ほとんどデータを使っていないのに、大きなプランに入っている」ということが見えてくるかもしれません。
例3:「動作が遅くて」と言われたら
- 「どんなときに遅いと感じますか?」
- 「アプリを開くときですか? それとも写真を撮るときですか?」
- 「使い始めて、どのくらいたちますか?」
「遅い」と言われても、原因はいろいろです。お客様が言葉にしていない困りごとを、やさしく聞いていきましょう。
聞いたことは、短くくり返して確認する
質問したあとは、聞いた内容を短く言い直して確認します。これは、友だちの話に「それ、こういうことだよね?」と返すのと同じです。
「外出が長い日が多くて、夕方に充電が切れるのが困っているんですね」
こうして確認すると、お客様も「そうなんです」と答えやすくなります。もし違っていたら、「いえ、実は…」と話してくれるかもしれません。
希望が多いときは、優先順位を一緒に決める
お客様の希望が多いと、全部を満たす商品が見つからないこともあります。
遠足のおやつを思い出してください。「300円まで」と決まっているとき、全部は買えませんよね。そんなときは「どれを一番食べたいか」を決めて選びます。
スマホ選びも同じです。
- 価格
- カメラ
- バッテリー
- 画面の大きさ
- 本体の軽さ
この中から、
「その中で、一番外せないのはどれですか?」
と聞いてみましょう。一番を決めてもらうと、候補がぐっと絞りやすくなります。
【携帯ショップの接客例】3つの場面で見てみよう

ここからは、携帯ショップでよくある場面で、質問のしかたを見てみましょう。
場面1:機種変更のご相談
説明から始める接客
店員:「こちらは最新モデルで、カメラ性能がとても高いです」
お客様:「そうなんですね…」
聞いてから提案する接客
店員:「今のスマホで、一番困っていることは何ですか?」
お客様:「写真を撮ると保存容量がいっぱいになってしまって」
店員:「写真をたくさん撮られるんですね。保存できる量が大きい機種や、写真の預け先を一緒に見てみましょうか」
お客様の「困りごと」に合わせて、説明する内容を選べています。
場面2:他社からの乗り換えのご相談
乗り換えのときは、料金だけでなく、今の使い方や状況を確認することが大切です。
- 「今は、どんな使い方が多いですか?」
- 「ご家族と一緒に契約していますか?」
- 「今のサービスで、気に入っている点はありますか?」
「気に入っている点」を聞いておくと、乗り換えたあとに「それがなくなってしまった」という行き違いを減らしやすくなります。
場面3:料金プランの見直し
「最近、請求が高くて…」というご相談は、プランを見直すチャンスです。
店員:「ここ数か月の、データの使用量はわかりますか?」
お客様:「あまり気にしたことがなくて」
店員:「では、一緒に確認してみましょう。使っている量に合わせて、プランを見直せるか見てみますね」
使っている量がわかると、必要以上に大きなプランに入っていないかを一緒に確認できます。おうちの電気代を、使った量から見直すイメージです。
※実際のプランや料金、条件は、お店や契約内容によって異なります。案内するときは、必ず最新の内容を確認してくださいね。
「検討します」と言われたときの返し方
さて、ここがいちばん悩む場面かもしれません。
「ちょっと検討します」
この言葉を聞くと、「ああ、断られたのかな…」と思ってしまいますよね。でも、お客様の「検討します」には、いろいろな意味があります。
- 本当に家族と相談したい
- まだ比べたいお店や商品がある
- 気になる点が残っている
- 決めきれていない(理由は自分でもよくわからない)
だから、**「検討します」は「終わりの言葉」ではなく、「まだ理由が見えていない合図」**と考えてみるといいかもしれません。
返し方の例
無理に引き止めず、やさしく聞いてみましょう。
- 「ありがとうございます。ちなみに、検討される中で気になっている点はありますか?」
- 「ご家族とご相談されますか? それでしたら、お話しするときの資料をお渡ししますね」
- 「比べたい点があれば、今のうちにお調べしますよ」
このとき、「今決めてください」と押さないことが大切です。決めきれない気持ちをそのままにして押してしまうと、お客様は少し緊張してしまいます。
帰るときに、一つだけ残してもらう
もう一つのコツは、「次に来やすい状態」をつくっておくことです。
- 「今日お話しした内容を、メモにまとめておきますね」
- 「また来られるときは、このメモを見せていただければすぐご案内できます」
お客様がもう一度来たときに、話の続きから始められると、安心してもらいやすくなります。
やりがちなNG例も知っておこう
ヒアリングは大切ですが、やり方によっては逆効果になることもあります。
- 質問攻めにする:テストのように次々と質問されると、疲れてしまいます。一つ聞いて、答えに合わせて次を考えましょう。
- 専門用語を使う:「5GのSub6が…」と言われても、わかりにくいですよね。「速くてつながりやすい通信です」のように、やさしい言葉に言いかえましょう。
- 答えを決めて聞く:「安いほうがいいですよね?」のように、答えを誘導すると、本当の希望が見えなくなります。
- お客様の話をさえぎる:途中で説明を始めてしまうと、「聞いてもらえていない」と感じさせてしまいます。
提案は、「結論・理由・例」で短く
提案するときは、「結論 → 理由 → 例」の順に話すと、わかりやすくなります。(これをPREP法といいます。)
「今のお話なら、こちらのプランが合いそうです。データの使用量が少なめだからです。たとえば、毎月3GB前後なら、大きな容量のプランにしなくても足りるかもしれません」
作文の書き方に似ていますよね。最初に「私の意見は〜です」と書いて、理由を書いて、例を出すと読みやすくなるのと同じです。
ただし、型にこだわりすぎて、一方的に話さないようにしましょう。お客様が「なるほど」と納得して選べることが、いちばん大切です。
次の接客で試せる小さな一歩
全部を一度にやろうとしなくて大丈夫です。次の接客では、この3つだけ試してみてください。
- 説明を始める前に、「どのような場面で使うことが多いですか?」と聞く
- 答えを、短くくり返して確認する
- 「検討します」と言われたら、「気になる点はありますか?」と一言だけ聞いてみる
一つ試せたら、それだけで大きな一歩です。
よくある質問
Q. 質問をするのが苦手です。何から聞けばいいですか?
A. まずは「どのような場面で使うことが多いですか?」から始めてみましょう。使い方を聞く質問は、お客様も答えやすいです。
Q. 「検討します」と言われたら、引き止めたほうがいいですか?
A. 無理に引き止める必要はありません。「気になる点はありますか?」と一言だけ聞いて、お客様のペースを大切にしましょう。
Q. お客様が忙しそうなときも、質問したほうがいいですか?
A. 急いでいるときは、質問を一つだけに絞るのがおすすめです。必要なことだけ確認して、短くご案内しましょう。
Q. 質問してもお客様が答えてくれないときは?
A. 無理に聞き出さず、少し見てもらう時間をつくりましょう。そのあとで、「気になるものはありましたか?」と声をかけてみてください。
まとめ|説明の前に、まず「聞く」
商品説明だけの接客は、教科書の読み上げに似ています。お客様の使い方や困りごとを聞いてから提案すると、「自分のために考えてくれている」と感じてもらいやすくなります。
- 説明の前に、まず一つ質問する
- 「不便です」と言われたら、もう一歩だけ掘り下げる
- お客様のタイプに合わせて、話しかけ方を変える
- 「検討します」は、終わりではなく「理由が見えていない合図」と考える
少しずつ試しながら、自分に合った接客の形を見つけていきましょう。